Space & Art / 空間とアート
VOLUME 01 / PART III / CHAPTER 30

なぜカフェの部屋は、食事・装飾・労働を一緒に設計したか

食堂を「美しい客席」の写真だけで読まない。V&Aの三つの飲食室では、調理する炉、蒸気と臭いに耐える表面、価格の違う献立、装飾を作る人々が一つのサービスを成立させた。

英国・V&AのRefreshment Rooms/1860年代以降、現況を含む実物・記録を見比べる出典 9 件
V&A・Gamble Room
The wub / Wikimedia Commons · V&A飲食室:1860年代以降/撮影:2022年 · CC BY-SA 4.0 図版情報
The wub / Wikimedia Commons · 元資料
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1856年の仮設食堂から、1868年の三室へ

現在のV&Aに残るGamble、Poynter、Morrisの三室は、最初からあった唯一の博物館食堂ではない。館の歴史によれば、Henry Coleは1851年の万国博覧会の運営で、来場者が茶と軽食を求めることを知った。1856年には東側に仮設の飲食施設が設けられ、1867年に撤去された。その後、庭側から入る観客を三つのアーチとガラス戸で迎える新しい飲食室が1868年に開いた。つまり現在の華麗な室は、博物館を夜まで開き、鑑賞と滞在を結ぶ運営上の試みを、建築として作り直した結果である。三室は一人の装飾家が同時に同じ様式で仕上げたわけでもない。Gamble Roomは正面の中心室、東に小さなPoynter Room、西にMorris Roomという違いから始める。全景写真では客席と壁、アーチ、窓の位置を先に確かめ、今日の卓数を1868年の計画に戻さない。現在の名称は後世の通称を含み、当時の案内でいうCentre、Grill、Green Dining Roomと照らす。[1]

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Gamble Room:きらめきと洗浄が同じ表面にある

中心のGamble Roomは色釉タイル、ガラス、エナメルに囲まれる。設計の中心となったGodfrey Sykesは1866年に亡くなり、James Gambleが引き継いだ。写真で柱と壁の光沢、鏡、上部の装飾を追うと、展示室に負けない視覚的な豊かさが分かる。ただし館の説明は、選ばれた材料を単なる豪華さとは説明していない。鉛釉のマジョリカ風タイルやエナメル鉄板の天井は、火、蒸気、食物の臭い、清掃という食堂固有の条件にも応える。天井材は洗える被覆であると同時に、当時強く意識された火災に対する不燃の区画でもあった。来館者には「絵のような室」でも、そこで毎日皿を下げ、汚れを拭き、火を扱う人には別の性能が必要だった。ステンドグラスが隠したのは眺望だけではない。館の記述では、窓の外の厨房、氷室、学校建物を見せない役割もあった。見せる面とサービスの面は、壁の同じ位置で調整されていた。[1]

同一対象Gamble Roomの細部V&A飲食室:1860年代以降/撮影:2017年同じ室の装飾。全景と部分を往復する。Ethan Doyle White / Wikimedia Commons · CC BY-SA 4.0 · 元資料[4]
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Poynter Room:グリルは調理用の炉である

Poynter Roomは当時Grill Roomと呼ばれ、肉を焼く場所として計画された。V&Aの一次解説は、一壁面を支配した鋳鉄製のopen rangeとopen grillを、チョップとステーキを焼く設備と記す。両側のhot chambersは皿を温めるための室である。これは客席と配膳側を開閉して仕切るスクリーンではない。掲載した2010年の現況写真では、窓の下にある黒い鋳鉄製の炉の位置と客席との近さが見える。鋳鉄・真鍮の細部や保温室の機能は、館の炉の保存記事と1866年図案に戻って照合する。館の保存担当は金属の埃を除き、錆を処置し、ワックスで保護したと説明する。装飾にはチューダー・ローズ、鷲、日本から着想を得た太陽と波の形がある。装飾が実用設備に施されたことが重要で、飾りだけを切り取って「東洋趣味」と呼ぶと、火と熱を扱う金属部材の役目が消える。残存する炉の姿だけで1868年の火力や換気量は算定できない。炉の設計素描と現在の保存状態を並べ、制作時と修復後を分ける。[1][2]

別個体・対照V&A・Poynter RoomV&A飲食室:1860年代以降/撮影:2013年同じ館の別室。グリルについては館の保存記事を参照。Love Art Nouveau / Wikimedia Commons · CC BY 2.0 · 元資料[5]
同一対象Poynter Room・現存する調理グリル炉の図案:1866年/室の開設:1868年/現況撮影:2010年写真の左壁中央に現存する鋳鉄製の調理グリル。V&Aの一次解説は開放炉でチョップやステーキを焼き、両側の保温室で皿を温めたと記す。2010年の現況を1868年の稼働風景とはしない。Txllxt TxllxT / Wikimedia Commons · CC BY-SA 4.0 · 元資料[6]
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現況写真と1866年の図案は別の証拠

Commonsで再利用条件を確認した現況写真に、Poynter Roomの調理グリル実物が写る。炉は画面の左壁中央にあり、陶板と窓、客席との位置関係が分かる。しかし火は入っておらず、2010年の客席と展示照明から19世紀の調理風景を再現しない。V&Aの保存記事にはPoynterによる1866年の設計素描と金属保存の記録があり、実物の部位を確かめる別の証拠になる。V&Aの保存記事にある設計素描と映像は、炉の形状と保存作業を確かめる原典である。ここに示す2010年の写真だけでは1866年の設計線や保存作業の過程は読み取れない。写真で確認できる「そこに炉がある」と、原典が説明する「チョップやステーキを焼き、両側で皿を温めた」を分ける。炉は客席と厨房を開閉して仕切る装置ではない。現存する金属の輝きは埃・錆の除去とワックス処置後の状態であり、1868年に熱を受けた表面の色を示さない。[2][1]

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青い陶板の裏にいる制作者を数える

Poynterは、Gambleの多色の眩しさとは違う、主として青い釉薬の陶板を壁に用いた。月、季節、星座を表す上部の画面と、花・果実・古典文学に登場する女性の肖像を配した下部の表面では、同じ青でも視線の高さが違う。館は、その陶板をNational Art Training Schoolの女性向け磁器クラスの学生が描き、時給六〜九ペンスを受け取ったと記録する。当時の女性にとって珍しい公的発注だったという館の評価は、完成写真に作者名が一人だけ書かれる不均衡を考える手掛かりになる。室をEdward J. Poynter「単独」の作品にするのではなく、意匠を決める人、陶板に筆を入れる人、金属を作る人、料理を出す人を分けて書く。炉の図案三点はV&Aの個票にあり、完成後の部位と比較できる。ただし図案に描かれた線が全て現物どおり実行されたとは限らない。保存処置を経た現在の色も、完成直後の発色そのものではない。[1][2]

同一対象Poynter Room・陶板と壁面室の装飾:1860年代/写真:2013年Poynter Roomの陶板壁。調理グリルではなく、装飾面の細部を示す。Love Art Nouveau / Wikimedia Commons · CC BY 2.0 · 元資料[7]
同一対象Poynter Room・窓室の装飾:1860年代/写真:2013年同室の窓の細部。館の保存記事にある調理グリルはこの写真に写らない。Love Art Nouveau / Wikimedia Commons · CC BY 2.0 · 元資料[8]
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Morris Room:別の協働、別の緑

西のGreen Dining Roomに選ばれたWilliam Morrisは、後年の名声とは違い、依頼当時はまだ比較的新しい事業者だった。館は、MorrisがPhilip Webb、Edward Burne-Jonesと協働したことを記す。壁にはオリーブの枝と猟犬の浮彫、天井には生乾きの漆喰へ型紙を当てた幾何学と植物の模様がある。Webbが構想した丸い瓶底ガラスの窓には、Burne-Jonesの人物のステンドグラスが組み合わされた。設計メモでは、濃緑で知られるオークの腰壁は当初青を想定していた。だから「Morrisの部屋は最初から緑だった」という現況写真からの断定は避ける。室を比べると、Gambleでは火と洗浄に耐える表面が華やかさへ、Poynterでは調理炉が模様を受ける金属へ、Morrisでは協働による歴史的モチーフの層へ結ばれる。同じ博物館で、鑑賞者の食事を支える課題に三つの別の答えがある。[1]

別個体・対照V&A・Morris RoomV&A飲食室:1860年代以降/撮影:2013年同じ館の別室。模様と席の配置を比較。Love Art Nouveau / Wikimedia Commons · CC BY 2.0 · 元資料[9]
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料金表が写真の外の階層を示す

V&Aは当時の一等・二等の献立と価格を挙げ、第三等のサービスは博物館建設で働く職人や労働階級の訪問者へ別の場所で提供されたと説明する。1867年の一等にある煮込みの野兎は一シリング六ペンス、ステーキ・プディングは一シリング、二等には十ペンスの仔牛カツレツや一ペンスの菓子が見える。これを現況写真に写る服装から客の身分を決める道具にしてはならない。価格とサービスの区分は文章資料の証拠、客席の材料と炉は写真の証拠であり、互いに別のことを示す。かつての労働者の声や厨房の完全な平面はここで示せないが、食事の空間には誰が座り、誰が作り、どこで食べたかという非対称があったことを、料金記録から問える。制作へ引き寄せれば、豪華な内装だけを模倣するより、どの使用条件を美しさの中へ織り込むかが先に来る。[1]

V&Aの三室を食事の価格別に読む時、低い価格の食事が用意されたことと、全来館者が平等に利用できたことは区別する。館の歴史記事は価格帯の違いと室の用途を示すが、ある日の客層の正確な割合までは示さない。青い陶板を描いた学生の賃金が記録されることは、華麗な空間の制作に雇用が組み込まれた具体的証拠である。写真で陶板や調理炉の位置を示せても、厨房の温度や換気能力を実測したことにはならない。保存記事の炉の画像を別タブで見る行為を演習に入れ、写真に写らない熱の条件を説明と分ける。[1]

READING PRACTICE

一枚に戻って考える

掲載したGamble RoomとPoynter Roomの客席・陶板写真で直接見えることを二つ挙げる。V&A保存記事の調理グリルについて、写真だけでは確認できない機能は何か。

照合の手がかり

掲載図版から客席、壁の陶板、窓などが見える。グリルが中央の調理炉と両側の皿を温める小室を持つことはV&A保存記事に基づく。掲載写真だけで炉の火力、換気量、厨房動線は分からない。

言える範囲

Commonsの現況写真で調理炉の所在と客席との位置は確かめられるが、細部の材質・調理法・皿の保温はV&A一次解説に依拠する。炉の火力・換気量、開設時の厨房動線、客ごとの身分は未詳。1866年の設計素描と保存映像はV&Aの記事で確認できる。

SOURCE REGISTER

出典・図版

  1. [1] V&A, History of the Refreshment Rooms
    https://www.vam.ac.uk/articles/a-first-of-its-kind-history-of-the-refreshment-rooms
  2. [2] V&A, Conservation of the Poynter Room grill
    https://www.vam.ac.uk/articles/conservation-of-the-poynter-room-grill/
  3. [3] The wub / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gamble_Room%2C_V%26A_%281%29_-_2022-09-04.jpg
  4. [4] Ethan Doyle White / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Detail_of_the_Gamble_Room%2C_Victoria_and_Albert_Museum.JPG
  5. [5] Love Art Nouveau / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Poynter_Room_in_the_V%26A_cafe%2C_London..jpg
  6. [6] Txllxt TxllxT / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:London_-_Cromwell_Gardens_-_Victoria_%26_Albert_Museum_1909_Aston_Webb_-_Caf%C3%A9_-_Poynter_Room_1878_with_Dutch_Tiles_II.jpg
  7. [7] Love Art Nouveau / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Poynter_Room_in_the_V%26A_cafe,_London._(5).jpg
  8. [8] Love Art Nouveau / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Poynter_Room_in_the_V%26A_cafe,_London._(10).jpg
  9. [9] Love Art Nouveau / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Morris_Room_in_the_V%26A_cafe%2C_London..jpg