Space & Art / 空間とアート
VOLUME 01 / PART III / CHAPTER 29

なぜ百貨店とショーウィンドウは街からの見方を設計したか

窓は壁の穴ではなく、歩いてくる人の注意を止める小さな舞台である。商品台、文字、照明、歩道の関係を、図案と実景の違いから考える。

米国の店頭・1920年代を中心に、Cooper Hewitt収蔵図案とLOC写真を対照実物・記録を見比べる出典 9 件
百貨店のハンカチーフ窓
National Photo Company Collection / Wikimedia Commons · この図版の店頭:20世紀初頭/撮影:1910年 · Public domain 図版情報
National Photo Company Collection / Wikimedia Commons · 元資料
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陳列窓を一枚の絵にしない

Cooper Hewittの所蔵資料は1920年代の店頭窓の図案を伝える。描かれた窓には商品を置く台、背面、看板、歩行者の視線を受けるガラスが組み合わさる。設計図案は何を正面から見せたいかに答えるが、完成した店頭そのものではない。米国議会図書館のNational Photo Company写真に写るハンカチーフの百貨店窓は1910〜26年の実景記録で、反復する小商品がどの高さ・密度で並ぶかを示す。図案と写真は店も場所も異なり、一方が他方の施工結果ではない。二つを比べて、窓を絵画的な面と手で組む什器の両方として読む。[1][2][3]

ショーウィンドウは外から見るための面であると同時に、裏側から商品を交換する作業場所である。正面写真に写らない扉や収納を想像で描かず、別の断面や設計図案を探す。陳列は固定の建築ではない。[1][2][3]

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窓の前と後ろは別の仕事

Cooper Hewittのショーウィンドウ史料は、板ガラスの発展と広告の場としての店頭窓を結ぶ。通行者はガラス越しに商品と文字を一瞬で読み、入店するかを決める。しかし写真の正面だけでは、窓の後ろに誰が台を組み、照明を替え、在庫を運んだかが見えない。陳列の前面は通りの速度に合わせて見え方を作り、背面では作業と販売の時間が続く。ガラスが大きくなったから自動的に百貨店が生まれたという単因子の説明はできない。[1]

別個体・対照Hess Brothersの婚礼陳列店頭・窓:1920年代中心/撮影:1926年1926年の別店舗の窓。商品台と演出の差を見る。Self Scanned / Wikimedia Commons · Public domain · 元資料[5]
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商品台が視線の高さを作る

透明なガラスがあるだけでは商品は見えない。台の上げ下げ、背景との色差、左右の余白、夜間の照明が、通りから目に入る順番を変える。LOCの別の店頭窓写真では、マネキンや品物が街路に対してどの面を向くかを確かめられる。写真に歩行者が写っていないから誰も見なかったとは言えず、写っている人がいればその人の購買行動も分からない。ガラスの反射や撮影角度は陳列の読み取りを変える。図版には撮影年の幅と個別店舗名を付け、1920年代のSaksの具体的な売上効果と混ぜない。[3][2]

別個体・対照Washington D.C.の店頭窓店頭・窓:1920年代中心/撮影:1920年LOCの別店舗写真。歩道側からの見え方を比較。National Photo Company Collection / Wikimedia Commons · Public domain · 元資料[6]

LOCのハンカチーフ窓写真を大きく見ると、商品を一列に並べるだけでなく、台や背景の高さを変えて、遠くから目に入る輪郭を作っている。Hess Brothersの婚礼陳列は、同じ売り場の別角度ではなく別の店・別の催しである。Washington D.C.の二つの店頭も品物の種類が異なる。商品が小さく軽いか、身体に合わせるものかによって、窓内の支え方も変わる。図版を四つ並べる理由は「1920年代の窓はみな同じだった」を示すためではなく、商品、台、文字、ガラスの組み合わせが異なることを見せるためだ。[3][2]

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売場は同じ窓の裏側ではない

シアトルのRhodes百貨店の1925年頃の売場写真には、アクセサリーを区分するケースと客が進む床が写る。同店系の1920年頃の陳列ケースでは、ポスターの文字と商品台の高さが読み取れる。これらはWashington D.C.などの店頭窓写真とは別店舗・別都市である。窓と売場を一連の動線として比較する問いは立てられるが、特定店舗の前後を再現した連続写真としては使えない。ケースの内部に何を並べたか、従業員がどこに立ったかは写真の解像度と史料の説明の範囲で述べる。[1]

別個体・対照Wells Corset Shopの窓店頭・窓:1920年代中心/撮影:1920年別業種の店頭窓。百貨店の陳列と同一店舗にしない。National Photo Company Collection / Wikimedia Commons · Public domain · 元資料[7]
別個体・対照シアトル・Rhodes百貨店の売場売場写真:約1925年1925年頃の別都市・別店舗の売場。街路窓から商品へ注意を移す条件の対照で、Washington D.C.の窓の裏側ではない。Brown, Kenneth S. / Wikimedia Commons · Public domain · 元資料[8]
別個体・対照シアトル・Rhodes Brothers店の陳列ケース陳列写真:約1920年1920年頃の別店舗でケースとポスターを見る。窓写真と同一店の売場復元ではない。Frank Jacobs / Wikimedia Commons · Public domain · 元資料[9]
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百貨店の窓と都市の関係

Cooper Hewittが扱うSaksの1927年資料は、建物、広告、窓を一緒に考える入口になる。街路へ向けた窓は、室内に入る前の選別装置であり、店に入る資格より先に誰に何を見せるかを決める。そこには売場のスタッフ、商品を運ぶ人、窓を組み替える人の作業がある。装飾だけを見れば、季節ごとに変わる台や背景の労働が消える。ただしLOCの写真はSaksの実施工ではない。Saksの図案・記事を読んで同時代の発想を知り、別店舗の写真で実際の部材を見る、という資料の非対称性を明示する。[1][2][3]

ショーウィンドウの写真は、品物そのものより先に「どう選ばれ、支えられたか」を見る。ハンカチーフのように軽い商品は細かい反復が可能で、婚礼の窓では儀礼的な場面を作る。別店舗の窓ではマネキンや背景が商品へ役割を与える。ガラスは通りと室内を隔てつつ、通行人へ品物を一方的に見せる。手に取って確かめる段階はまだ先にある。Saksの図案を含むCooper Hewittの資料は1920年代の構想を示し、LOCの写真は別店の実装を示す。図案と実景の差を保って比較すれば、什器が視線を作る仕組みを、特定の店の架空の施工史にせずに検討できる。[1][2][3]

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街から読めること、読めないこと

写真で言えるのは、ある窓で商品がどのような面・高さ・密度に配置されたかまで。夜間の光、ガラスを通る反射の強さ、歩行速度、売上や客層の変化は、写真だけから測れない。百貨店が「大衆に開かれた」ことも、その建物に誰でも同じように入れたという意味にはならない。街路の規則、窓の発注、広告、買い物客の記録を追加して初めて、窓が経済と生活のどこに働いたかを論じられる。陳列什器を章の中心に置けば、様式名よりも物の見せ方の仕事が見えてくる。[1][2][3]

Cooper HewittのSaks関連記事では設計者の図案を確認できる。原典の線画では「計画された視線」を、LOCの実景写真では「ある時点に組まれた台と商品」を問う。見比べる対象の店舗が違うことをキャプションと本文の両方で反復しておく。街路を歩く人が何秒で窓を見たか、店員が何時間かけて陳列を替えたか、窓が何点売上に寄与したかは、写真ではなく別の観察・帳簿の問いである。販売効果を示す帳簿がなくても、写真から什器と視線の関係は観察できる。[1][2][3]

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商品を美術品に見せる仕組み

商品台、額縁状の窓、照明、ポスターは、一つの物を他の在庫から切り離して眺めさせる。Cooper Hewittが扱う1927年Saksの窓は、窓を舞台として設計した同時代の例である。記事の図案は計画を示す資料として読む。収蔵された図案と現在の写真は、実施された窓の全条件を同じように証明しない。制作メンバーは、商品を「飾った」だけでなく、街路から数秒で読める背景・高さ・文字・光がどう分担するかを図版ごとに指せる。ただし販売増加の量は売上記録を要し、画像から作らない。[2][1]

Rhodes百貨店の売場写真でケースの形と人が通る余白を見た後、Washington D.C.の店頭窓へ戻る。前者は店内の長い滞在、後者は通りの短い注視を想定する。ただし別店舗なので、一人の客が窓を見てからその売場に入ったという実話を作らない。1920年代のポスター付きケースは文字と商品が同じ枠へ収まる別の例になる。Cooper HewittのSaks資料へ進む場合も、図案が実施写真なのか提案図なのかを個別に見分ける。販売効果は売上原簿がない限り数字にできない。[2][1]

The Metのような美術館展示では照明が作品を読む時間を延ばすが、店頭窓では通行者が歩きながら短時間で商品と文字を捉える。これは比喩ではなく、図版の窓の幅、商品の間隔、見出し文字が街路側へ向いているかを確認するための視点である。写真に通行者が写らなければ速度は測れず、設計図と当時の商業資料を補う。[2][1]

READING PRACTICE

一枚に戻って考える

掲載したWashington D.C.などの店頭窓とSeattleの売場・陳列ケースを比べる。どの視線の違いが見え、何を同一店舗の連続写真とは言えないか。

照合の手がかり

通行者が短く見る窓と、店内で商品ケースの間を進む売場の違いを比較できる。ただし都市・店が異なり、一人の客の入店前後やSaksの実施例とは言えない。

言える範囲

Cooper HewittのSaks図案は原典で確認する。ここにある写真四枚は別店舗を含み、同一店の改修史ではない。

SOURCE REGISTER

出典・図版

  1. [1] Cooper Hewitt, Watch This Window
    https://www.cooperhewitt.org/2017/10/04/cooper-hewitt-short-stories-watch-this-window/
  2. [2] Cooper Hewitt, A Window into the 1920s
    https://www.cooperhewitt.org/2014/05/05/a-window-into-the-1920s/
  3. [3] Library of Congress, Department store window
    https://www.loc.gov/pictures/item/2016825647/
  4. [4] National Photo Company Collection / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Department_store_window%2C_handkerchiefs_LCCN2016825647.jpg
  5. [5] Self Scanned / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:1926_-_Bridal_Display_-_Hess_Brothers_-_Allentown_PA.jpg
  6. [6] National Photo Company Collection / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bishop_%26_Turner%2C_%28Washington%2C_D.C.%29%2C_window_LCCN2016823395.jpg
  7. [7] National Photo Company Collection / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Wells_Corset_Shop%2C_%28Washington%2C_D.C.%29%2C_window_LCCN2016823401.jpg
  8. [8] Brown, Kenneth S. / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Rhodes_Department_Store_interior_showing_jewelry_and_accessory_departments,_Seattle,_ca_1925_(SEATTLE_2884).jpg
  9. [9] Frank Jacobs / Wikimedia Commons
    https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Display_case_with_posters_for_National_Thrift_Week_at_Rhodes_Brothers_Ten_Cent_Store,_Seattle,_ca_1920_(MOHAI_7394).jpg