なぜルネサンスは古代建築を再読し、透視図法と結び付けたか
古代劇場の形式を学び直した建築と、遠くへ続くように見える舞台の街路を、同じ施設の別の制作判断として読む。

Didier Descouens / Wikimedia Commons · テアトロ・オリンピコ:1580年代/撮影:2016年 · CC BY-SA 4.0 図版情報
一つの建物に二つの時間を見つける
1776年平面は何を測る資料か
1776年の平面図を現況写真の隣に置くと、観客席の半円、舞台正面の厚み、街路景が占める奥の短さを確かめられる。ただしこれは建設同時代の原設計図ではなく、完成後二世紀近くを経た測図・刊行物である。Palladio Museumの図面群はさらに断面や観客席下の平面を分けて示す。線で読める実際の占有面積と、写真で見える遠近の印象を一つにしない。後年の図が原状態をどこまで示すかは、改修・保存の記録と合わせて判断する。[1]
平面と写真を往復する
舞台中央の入口から遠くへ続くように見える街路は、写真では深い都市に見える。しかし平面と断面を合わせると、建物内の限られた奥行きで幅と高さを縮める構成が働くことが分かる。透視図法は古代から完成形で借りてきた規則ではなく、15〜16世紀に理論と制作が発展した視覚操作である。ここでは一点から見た像の効果を、実際に歩ける都市の奥行きと取り違えない。観客席の位置が変われば効果がどう変わるかは、固定写真では十分に確かめられず、観察位置を変えた記録や模型が要る。[1]
Palladio Museumの図面群は、舞台正面だけでなく観客席の下、断面、中央街路の見通しを分けて提示する。写真では遠くへ続く街路が一瞬で見えるが、平面を開くとその景色が狭い建物の奥に収まることが分かる。ここで演習として、写真の中の「遠い建物」に見える一箇所と、図面では短い距離で終わる箇所を対応させる。遠近法は見る位置を前提とするため、客席の端から同じ効果が生じるとは限らない。観客席の段の写真は視点が複数あることを示すが、歴史上の座席割や上演時の照明までは示さない。舞台装置を絵のように解釈する時も、足で歩ける奥行きと、目に生じる奥行きを分ける。[1]
制作の分担を舞台正面で読む
パッラーディオは古代劇場の調査と建築理論を自分の設計へ移したが、劇場の完成前に亡くなった。舞台奥の透視街路はスカモッツィが引き継いで組み立てた。写真の正面アーチを建物の入口と見たあと、その奥に縮小していく街路を探す。建築的な正面と舞台装置は同時に見えるが、役割も作者も違う。観客席の段の写真は見る側の幅を示し、街路の効果が一つの完全な視点だけの静止画像ではないことを考えさせる。実際の座席割と舞台上演の明るさは別の同時代記録が要る。[1]
「古代の再生」をどこまで言えるか
絵と建築の境界を見分ける
舞台奥の街路は、平面上の構造物でありながら、正面からは描かれた遠景のように働く。ここで建築、彫刻、絵画的な空間表現を一本の序列にしない。舞台の近景と最奥を別々に見た写真、実測図の平面・断面を組にして、実寸と見かけの距離を区別する。今日の保存された舞台を見ても、過去の照明条件や観客の受け止めを直接知ることはできない。この区別が、室内写真を見て広く感じたという印象から、何がその広がりを生んだかを分解する練習になる。[1][2]
18世紀の版画と今の撮影
約1750年の舞台正面版画と今日の写真を比較する。版画はどの部位を見せたいかを作図者が整理した表象で、歪みのない実測図とは違う。写真は奥行きの錯覚を強めるが、レンズ位置と画角が決まっている。両者が似ていても「1585年の観客がこの通り見た」とは言えない。図面は広がりの物理的な限界、版画は歴史上の見せ方、写真は保存された現況をそれぞれ示す。三資料の一致と不一致を探すことが、古代形式の再読と新しい透視装置を区別する手掛かりとなる。[1][2]
舞台街路の『遠さ』を調べる際は、写真の消失点へ定規で線を引く前に、平面の舞台正面と最奥の位置を見つける。1776年平面と約1750年版画はともに完成後の資料なので、1585年の原図でも初演写真でもない。図版の制作時点を記しておけば、古代劇場への参照、16世紀の建設、18世紀の記録、今の保存の四層が分かれる。Palladio Museumの断面は公式サイトにあり、ここに示す平面だけで高さ方向まで断定しない。[1][2]
テアトロの観客席段と舞台正面は同一施設の対向する側にある。別室オデオンは複合施設の一部だが、街路景の奥にはない。ここでは観客側の視点、舞台の正面、舞台裏の短い占有範囲を順に見比べる。これは建物内を歩く順路ではない。版画の遠近表現と平面に記された建物の奥行きを分けて読む。[1][2]
一枚に戻って考える
舞台写真の「見かけの奥行き」と実際の建物内の奥行きをどう区別するか。図面に何を尋ねるか。
照合の手がかり
平面・断面で街路景の実寸、縮小、観客位置を確かめる。写真だけで奥行き寸法を推定しない。
考える手がかり:平面・断面で街路景の実寸、縮小、観客位置を確かめる。写真だけで奥行き寸法を推定しない。
Palladio Museumの断面図は公式サイトで確認できる。ここに示す平面図だけでは、高さ方向の寸法や構造を検証できない。
出典・図版
- [1] Palladio Museum, Teatro Olimpico drawings
https://mediateca.palladiomuseum.org/palladio/oggetto_immagini.php?id=5 - [2] UNESCO, City of Vicenza and Palladian Villas
https://whc.unesco.org/en/list/712/ - [3] Didier Descouens / Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Teatro_Olimpico_%28Vicenza%29_scena_.jpg - [4] Ottavio Bertotti Scamozzi / Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Teatro_Olimpico_pianta_Bertotti_Scamozzi_1776.jpg - [5] Didier Descouens / Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Teatro_Olimpico_%28Vicenza%29-_Scaenae_frons_close-up_-_La_porta_regia.jpg - [6] Didier Descouens / Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Teatro_Olimpico_%28Vicenza%29_-_Gradinata.jpg - [7] Didier Descouens / Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Teatro_Olimpico_%28Vicenza%29-_L%27Odeon.jpg - [8] Unknown artistUnknown artist / Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Print,_Prospetto_Interno_del_Teatro_Olimpico_Nella_Citta_di_Vincenza_(View_of_the_Stage_of_the_Teatro_Olimpico_at_Vicenza),_ca._1750_(CH_18433643).jpg