Space & Art / 空間とアート
VOLUME 01 / PART I / CHAPTER 10

なぜ窓・格子・屏風は、光と風を通しながら視線を選ぶか

孔の大きさ、木の格子、着色ガラスを別個体として比較し、透過・遮蔽・通風が同じ効果ではないことを読む。

インド・グジャラート/17世紀初頭;エジプト/18世紀;オスマン圏/別個体実物・記録を見比べる出典 4 件
石透彫ジャーリー
The Metropolitan Museum of Art, Open Access · early 17th century制作。展示写真の撮影年未確認 · Public Domain / The Met Open Access CC0 図版情報
The Metropolitan Museum of Art, Open Access · 元資料
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石の孔は何を通すか

The Metのインド由来とされる17世紀初頭の石透彫ジャーリーは、窓、仕切り、欄干に用いられる種類の個体である。美術館の個票は、空気を通し、直射日光を和らげ、幾何の影を作る役割を説明する。この個体の孔を正面写真で数え、背後の明暗を想像することはできるが、元の建物の方位や実際の室温を写真だけで特定できない。細部写真では石の厚さと模様の重なりを確認する。透過する光の量は、模様の開口率、石の厚み、日射角度と設置位置によって変わり得るので、模様が美しいという印象から性能の数値へ跳ばない。[1]

格子の働きを図にするとき、窓の正面模様だけを転写しても人の経験は表せない。The Metのジャーリーは一枚の石を透かし、孔の縁と厚みが影を作る。マシュラビーヤは木の部材を組み、上と下の目の密度の差によって通るものを変える。オスマン期の窓では色のあるガラスが光そのものの質を変える。三つは見た目の幾何という表層に共通点があっても、素材の加工、修理、開閉、設置高さの条件が同じではない。美術館の均一な照明下で撮られた写真は、強い外光と暗い室の両側から見た時の差を示さない。部材を再び建物の中へ想像で戻す前に、どの個体に原設置場所の情報が残っているか個票で確認する。[1]

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木の格子の別解

The Metのエジプトに帰属する18世紀のマシュラビーヤの個票は、異なる木製格子を大きな面に組み、上部の広い目が室内の通風を改善したと記す。下部の密な面と上部の開いた面の差は、光、空気、人の視線を一様に通さない設計として読める。ジャーリーと形の似た幾何を持っていても、石を透かし彫ることと木の細材を組むことは作り方が違う。二つの個体の由来も時代も同一ではない。似た模様から直接の技術伝播を断定するには、作り手、交易、設置場所の史料が必要である。[2]

同一対象同ジャーリー/別角度early 17th century制作。展示写真の撮影年未確認石の厚みと彫りの細部。 early 17th century制作。展示写真の撮影年未確認。The Metropolitan Museum of Art, Open Access · Public Domain / The Met Open Access CC0 · 元資料[1]

「窓」の語に一括される部材でも、石の透彫、木の格子、色ガラスでは補修の仕方が違う。厚い石の孔を壊さず洗うこと、木の細い部材を交換すること、割れたガラスを取り替えることは、形の維持に別の技術を要する。The Metの三つの収蔵品は、現地の設置面から離れているため、元の修理周期を示さない。ただ、材の接合と表面の状態は個体写真から読み取れる。光・風・視線が同じ孔を通るときも、それぞれの条件を測る方法は異なる。遮光の印象を照度値とせず、視線が通りにくい印象を文化的な男女隔離の実証としない。[2]

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窓全体へ戻る

The Metの17世紀エジプトまたはシリアに帰属する窓は、採光と装飾を組み合わせる別個体として置く。石格子の孔、木製格子の密度、ガラス窓の光色を一枚の「イスラーム圏の窓」の変遷図に並べない。三図はどれも美術館に切り離されて収蔵された部材で、原位置の視線方向、外部との高さ関係、季節ごとの開閉はほとんど示さない。ひとつの部材の拡大だけで、室のプライバシーの運用を語れない。実際の視線を考えるには、建物全体の平面、外の道、内の座る位置を対応させる必要がある。[3][1][2]

別個体・対照木製マシュラビーヤ18th century制作。展示写真の撮影年未確認上部と下部で格子の密度が異なる別個体。 18th century制作。展示写真の撮影年未確認。The Metropolitan Museum of Art, Open Access · Public Domain / The Met Open Access CC0 · 元資料[2]
別個体・対照17世紀エジプト/シリアの窓17th century制作。展示写真の撮影年未確認ガラスと枠の別個体。出土地・時期は個票に従う。 17th century制作。展示写真の撮影年未確認。The Metropolitan Museum of Art, Open Access · Public Domain / The Met Open Access CC0 · 元資料[3]

見る側と見られる側の位置を固定せずに「目隠し」と書くと、上下の開口差の意味を見落とす。通りから室内を見る視点、室内で座る人の視点、立つ人の視点、太陽の高度はそれぞれ違う。The Metの個票が記す通風や遮光の一般的な働きは、個体を特定の家へ戻す復元図ではない。石のジャーリーについても、実験による透過率や風量はこの収蔵写真から得られない。比較では「どの面を通すか」を光・空気・視線の三本の矢印で別々に示し、矢印に根拠がない場合は空白にする。文化的なプライバシーの規範を模様だけから推定せず、設置された社会の史料を要する。制作への応用は模様のコピーではなく、互いに異なる三つの流れを一枚の面でどう選ぶかという設計判断にある。[3][1][2]

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固定窓と可動の屏風は働きが違う

石のジャーリー、木のマシュラビーヤ、ガラスの窓は建物の開口に関わる。対してMetの「誰が袖図」は一双の可動の屏風で、折り曲げて室内へ置くことができる。画面に隙間や折り目が見えても、屏風を窓と同じ採光・換気装置として評価しない。光を通すための孔が見えるジャーリー、外の視線を選ぶ格子、色を伴うガラス、室の中の視線を遮り変える屏風を、何を通し何を遮るかの二列で比較する。Metの屏風には右隻・左隻で制作時期の記載が異なるため、一組として展示されていてもすべて同じ年に作られたとは言わない。窓の外にある都市との関係と、屏風の両側に生じる室内の関係は異なる。これを一つの「透かし模様」の歴史にまとめない。[4][1]

別個体・対照日本/可動の屏風作品16世紀末〜17世紀前半/撮影年未確認「誰が袖図」屏風の一双。16世紀末〜17世紀前半の右隻、17世紀前半の左隻。壁に固定された窓ではなく、折り曲げて置く仕切りである。The Met収蔵の公開画像。The Metropolitan Museum of Art / Open Access · Public domain · 元資料[4]
同一対象屏風/反対側の隻作品16世紀末〜17世紀前半、撮影年未確認同じ「誰が袖図」一双の別の隻。折り目と紙面の連続を確認し、固定窓との差を読む。 作品16世紀末〜17世紀前半、撮影年未確認。The Metropolitan Museum of Art / Open Access · Public domain · 元資料[4]

六曲屏風は折り目によって見る面を変えられるが、掲載した美術館写真ではどの角度で室に置かれたかは分からない。窓材三種は建築の外皮に取り付けられるものとして収蔵されていても、元の建物の視線条件が失われている。孔が開くか、ガラスが閉じるか、屏風が動くかをまず物理的に分ける。そうして初めて「視線を選ぶ」という共通の言葉を比較に使える。細部写真を加えた屏風についても、絵柄の意味を視線制御の機能だけに還元せず、Metの作品個票に戻る。[4][1]

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透けて見えることと風が通ること

ジャーリーの石の孔は面の向こうを断続的に見せるが、どれだけの風が通ったかは孔の写真だけでは測れない。マシュラビーヤの木製部材も、格子が細かいほど必ず涼しいとは言えない。気候への効果は開口面積、風向き、室の奥行き、日射、住む人の開閉に左右される。着色ガラスの窓は光の色を変え、同じ孔の密度でも石格子とは別の視覚効果を持つ。各作品の地域・時期をMet個票に従って分け、実際の建物に設置されていた位置が不明な場合は不明と書く。今日の展示写真は、元の窓の両側にあった人の位置や隣家との距離を再現していない。素材の差は写真で確認できるが、通風量やプライバシーの実測値を作らない。[1][2][3]

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視線の編集として制作に戻す

屏風の一双を全体と細部で見ると、折り目を越えて絵が続く一方、曲げる角度で一度に見える範囲が変わる。固定された壁画や窓とは違い、鑑賞者と置き手が室内の視界を更新できる。店舗のアート制作へ移すなら、格子や屏風の模様をそのまま借りるのではなく、客がどこで立ち止まり、何が先に見え、何を見せないかを考える。窓材の図版は外光・外部視線の条件を、屏風は可動の面による内部の区切りを教える。ただし屏風の一枚の収蔵写真には実際の室内配置が写らず、伝統的な使い方を一つに決められない。Metの個票が示す作品情報と、制作現場の寸法・光の測定を別に用意する必要がある。[4]

同一対象屏風/人物と衣の細部作品16世紀末〜17世紀前半、撮影年未確認同屏風の細部。可動の面が視線を遮るが通風・採光の性能は窓材と同じではない。 作品16世紀末〜17世紀前半、撮影年未確認。The Metropolitan Museum of Art / Open Access · Public domain · 元資料[4]
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比較の結論と限界

「風を通す」「見えにくくする」「光を色づける」は同じ形の言い換えではない。素材と孔、可動部の有無、背後にいる人の高さを確認して初めて条件が変わる。個体写真から実測の風速や照度、住人の性別による使用の規則を想像で書かない。[1][2]

写真で確認できるのは孔、部材の組み、表面の色である。室内の人が外をどれだけ見られたかは、部材が置かれた高さと対面する通りの距離を要する。設置場所を失った個体ではその計算ができない。視覚的な比較と性能評価を切り分ける。[1][2]

原位置が不明な部材を、特定の室の高さや向きへ復元したように図示しない。照度と風量は未測定である。[1][2]

READING PRACTICE

一枚に戻って考える

三つの個体で「何を通し、何を遮るか」を素材・孔・開閉の有無から説明せよ。言えない性能値を一つ挙げよ。

照合の手がかり

石格子は孔と厚み、木格子は上下の目の密度、窓は枠とガラスを読む。元の室の実測風速・照度は不明。

言える範囲

The Metの別個体三種。年代・帰属地域の推定を確定地と表示しない。

SOURCE REGISTER

出典・図版

  1. [1] The Metropolitan Museum of Art — 所蔵個票・解説
    https://www.metmuseum.org/art/collection/search/453261
  2. [2] The Metropolitan Museum of Art — 所蔵個票・解説
    https://www.metmuseum.org/art/collection/search/445979
  3. [3] The Metropolitan Museum of Art — 所蔵個票・解説
    https://www.metmuseum.org/art/collection/search/453572
  4. [4] The Metropolitan Museum of Art — Whose Sleeves? (Tagasode) 屏風個票
    https://www.metmuseum.org/art/collection/search/45375